2023年
君たちはどう生きるか
公開:2023年 / 「君たちはどう生きるか」:スタジオジブリホームページ
OpenToonzは、スタジオジブリが長年デジタル制作に用いていたToonzのインハウス・カスタマイズ版「Toonz Ghibli Edition」が基になっています。 これまでもToonzとGTSを軸とした制作を行ってきたため、「君たちはどう生きるか」の制作現場でもOpenToonzとGTSが広く活用されました。 また、「思い出のマーニー」(2014年)の制作で初めて開発されたIwaWarperも、今作のためにさらなる改良が行われ、多くの場面で用いられました。
作画工程では、ペンシルテストにOpenToonzが用いられました。
仕上げ工程では、すべてのカットのスキャンにGTSが用いられ、すべてのカットの色彩設計と彩色にOpenToonzが用いられました。
CG工程では、作画の輪郭に合わせて背景美術素材をゆがめて動かす「ハリコミ」にIwaWarperが使われました。特に作品の後半部分の多くのカットでその成果を見ることができます。
撮影工程において、すべてのカットはOpenToonzで撮影されました。本作のために、GlareFx、FloorBumpFx、FlowFxシリーズ(※)などのビジュアルエフェクトが新たに開発されました。
また、ドルビーシネマ版での上映のために、HDR映像のレンダリング機能が新たに開発されました。 これらの新エフェクトと新機能は、V1.7以降のOpenToonzに全て盛り込まれています。
※
- GlareFx … 眩しい光源の周りに見える放射状の光の筋を再現するためのエフェクト。フィルタの形状からから光の回折をシミュレートします。
- FloorBumpFx … 手描きで描かれた背景画と高さの参照画像から、3Dのように床面を凹凸させるエフェクト。3Dソフトを介することなく、立体的な凹凸をOpenToonz上で制御することができます。
- FlowFxシリーズ … 作画で描かれた斜線をタッチの向きの参照画像として、特効のような汚れのタッチを生成するエフェクト。キャラクターの動きに沿わせながら、手描きのランダムさを含んだ特効を作ることができます。
2021年
竜とそばかすの姫
公開:2021年 / 「竜とそばかすの姫」公式サイト
作画のペンシルテスト工程と演出チェックにOpenToonzが使用されました。 スタジオ地図ではこれまで同工程に別のソフトを使用していましたが、他スタジオでの使用実績もあり「竜とそばかすの姫」の制作から新たにOpenToonzを導入しました。各アニメーターの作画机にカメラスタンドを設置して、各自が自分の机でペンシルテストができるような作業環境を構築した他、自宅作業のアニメーターにも自宅に同様の環境を用意してチェックできるようにすることができました。
現場からのコメント: 「以前使用していたソフトより安定していてスムーズに作業に使用することができ、作画スタッフにも比較的すぐに使い方を覚えていただけました。非常に使い心地が良く、助かりました。」
2019年
なつぞら
公開:2019年 / 連続テレビ小説「なつぞら」公式サイト
「なつぞら」は実写のテレビドラマですが、日本アニメの草創期に活躍した女性アニメーターの半生を描いており、作品中にアニメーションが多く登場しました。オープニングタイトルバックと劇中に挿入されるアニメーションパートの撮影工程の多くにOpenToonzが使用されました。
撮影監督・泉津井陽一氏のコメント: 「今回のプロジェクトでは撮影データの入力や修正のし易さ、仕上げ済み作画データの修正対応等のし易さを考慮してOpenToonzを使用することにしました。素材の仕上がりを待つ間に撮影作業を先行して進められ、また作画修正による追加のトレス・ペイント作業も他のソフトを介さずにシームレスに行えたので少ない時間を有効に使うことが出来ました。」
プロメア
公開:2019年 / 「プロメア」公式サイト
原画/動画のペンシルテスト工程にOpenToonzが使用されました。トリガーでは「キズナイーバー」の制作からOpenToonzがペンシルテスト工程に導入され、「リトルウィッチアカデミア」「SSSS.GRIDMAN」に続き本作でも使用されています。
従来はアニメーターが自分の描いた作画の確認をする目的のみに用いられていましたが、本作では新たに作画監督/演出がタイミングをチェックし修正する用途(作監/演出チェック)にも用いられました。作監/演出チェックではアニメーターが取り込んだ画像データを再利用できるため、作業効率が向上しました。
さらに、ペンシルテスト工程で取り込んだ画像とタイムシートを再利用し、線撮作業(※)にも数カット試験的に用いられました。線撮に必要な「カットボールド機能」「タイムコードエフェクト」が新たに開発され、本作で初めて使用されました。
(※線撮…編集やアフレコ作業用に、制作途中段階の素材を用いてカットを先行して撮影すること)